日々の松風
柳宗理が亡くなったそうだ。
ひとり暮らしを始めて数年間、電気ポットでお湯をわかしていた。その電気ポットがこわれてからしばらくは、鍋でお湯をわかした。
ある時思いたった。こんなに毎日使うんだから、いいやかんを買おう、と。それで高速バスで何時間もかかる東京まで行って、東急ハンズで柳宗理のつや消しのやかんを買って大事に持ち帰り、それから十年近く使い続けている。
世界中で使われている、とても有名なやかん。 すぐお湯がわく、安定した広い底。手前に向かって優雅に湾曲し、傾けやすい取っ手。たくさん、正確に注げる大きな注ぎ口。何回か空焚きし、落ちない汚れがしみこんだやかん。
これから先もずっと、嬉しいとき、悲しいとき、これでお湯をわかしてお茶を飲むだろう。